知っておきたいバリアフリーリフォームの基本!費用や事例についてもご紹介

公開:
2025.01.31
更新:
2025.01.21

二世帯リフォーム

食器を拭く女性と車いすの女性の会話

年齢とともに足腰が弱くなり、住み慣れた自宅での生活に不便を感じるようになる高齢者は少なくありません。国民生活センターの調査によると、65歳以上の高齢者の事故の約77%が住宅内で発生しており、その多くが転倒や転落によるものです。

このような事故を未然に防ぎ、高齢者が安心して自立した生活を送れるように家を改良するのがバリアフリーリフォームです。手すりの設置や段差の解消、滑りにくい床材への変更など、適切な住環境の整備により、高齢者の安全性を確保するとともに、介護する家族の負担も軽減できます。

この記事では、同居する高齢の両親のために住環境を整えたいとお考えの方に向けて、バリアフリーリフォームの基本的な知識から、具体的な工事内容、費用の目安、そして成功のポイントまでを詳しく解説していきます。

LIXIL不動産ショップでは、バリアフリーも含めたリフォームのことや資金の相談、中古住宅の購入までワンストップで相談可能。
実際のリフォーム事例も複数掲載していますので、興味のある方はぜひご覧ください。

リフォーム事例を見る

バリアフリーリフォームを検討すべきタイミングは?

バリアフリーリフォームを検討すべきタイミングは?

バリアフリーリフォームは、高齢者の身体機能の低下や事故のリスクが高まってから始めるのでは遅い場合があります。転倒や転落などの事故は予期せず起こるものであり、事前の対策で防げるケースも少なくありません。そのため、以下のようなタイミングで、計画的に準備を進めることが重要です。

  • ❖ 子どもが独立したとき
  • ❖ 他のリフォームを行うとき
  • ❖ 家の老朽化を感じたとき
  • ❖ 同居人が高齢者(65歳以上)になったとき

この理由について以降で詳しく解説します。

子どもが独立したとき

子育てが終わり、子どもが独立するタイミングは、バリアフリーリフォームを検討する絶好の機会です。この時期は、夫婦二人の生活を見据えた住まいづくりを考える余裕が生まれ、年齢的にも多くの場合で50代以降に差し掛かり、心身の変化も意識しやすくなっています。

また、子どもの独立により住まいの機能変更がしやすく、家庭の収入も比較的安定している時期であることから、リフォームの計画を立てやすいタイミングといえます。

他のリフォームを行うとき

住宅リフォーム推進協議会の調査によると、リフォーム全般のきっかけとして最も多いのは、家屋や設備の老朽化への対応です。キッチンやリビングなどの一般的なリフォームを予定している場合、同時にバリアフリー化を進めることで、工期の短縮やコストの削減が可能になります。

また、水回りの設備交換と合わせて手すりの設置や段差解消を行うなど、効率的な改修を実現できるでしょう。

家の老朽化を感じたとき

築年数が20年を超えると、住宅設備の劣化や不具合が目立ち始めます。この時期は、将来を見据えたバリアフリー化を検討するタイミングとして最適です。

特に水回りや床材、建具などの修繕が必要になった際は、バリアフリー対応の新しい設備に交換することで、安全で快適な住環境を整えることができます。また、耐震性能の向上と併せて検討することで、より安心できる住まいづくりが可能になります。

同居人が高齢者(65歳以上)になったとき

親などの同居人が65歳以上になると、加齢による筋力や視力の低下が進み、住宅内での事故リスクが高まります。国民生活センターの調査では、65歳以上の高齢者の事故の多くが住宅内で発生しており、その主な原因は転倒や転落です。この時期に、手すりの設置や段差の解消、床材の改修など、必要な箇所から順次バリアフリー化を進めることで、安全で自立した生活を支援できます。

バリアフリーリフォーム3つのメリット

バリアフリーリフォーム3つのメリット

バリアフリーリフォームは、高齢者とその家族にとって大きなメリットをもたらします。厚生労働省の「2022年 国民生活基礎調査」によると、高齢者の介護が必要となるきっかけの約14%が骨折・転倒によるものとされています。適切なバリアフリー化により、こうしたリスクを軽減することでより安全で快適な生活を実現できます。バリアフリーリフォームの主な効果として、以下の3つのメリットが挙げられます。

  • ❖ 事故防止になる
  • ❖ 自立支援になる
  • ❖ 負担の軽減になる

以降で詳しく解説します。

1. 事故防止になる

バリアフリーリフォームの最も重要なメリットは、住宅内での事故防止につながることです。消費者庁の調査によると、65歳以上の転倒事故の約48%は自宅で発生しており、日常生活における事故のリスクは予想以上に高いことがわかります。

段差の解消や手すりの設置、滑りにくい床材への変更により、つまずきや転倒などによる事故を未然に防ぐことができます。特に浴室や階段といった事故が起きやすい場所の安全対策は、骨折などの重大な怪我を予防する効果が期待できるでしょう。

2. 自立支援になる

バリアフリーリフォームは、高齢者や障害者の自立した生活をサポートします。たとえば、浴室やトイレに手すりを設置することで、介護者の手を借りることなく、自力での立ち座りが可能になります。また、段差をなくすことで歩行器や車椅子での移動がスムーズになり、自由な行動範囲が広がります。

このように住環境を整備することで、できることが増え、自立した生活を送ることができるでしょう。また、運動量が増えることで体力の維持にもつながり、健康寿命を延ばす効果も期待できます。

3. 負担の軽減になる

バリアフリーリフォームは、介護する家族や介護者の負担軽減にも大きく貢献します。たとえば、狭いトイレでの排泄介助は介護者の身体的負担が大きくなりがちですが、十分なスペースを確保することで、介助がしやすい環境を整えることができます。

また、段差をなくしたり手すりを設置したりすることで、被介護者の転倒リスクが減り、介護者の精神的な負担も軽減できます。さらに、浴室を広くして介助スペースを確保したり、洗面台の高さを調整したりすることで、日々の介護動作が楽になり、介護者自身の腰痛予防にもつながるでしょう。

バリアフリーリフォームの内容と費用

バリアフリーリフォームの内容と費用

バリアフリーリフォームは、住まいの状況や予算に応じて検討しましょう。まずは事故のリスクが高い場所から優先的に改修を行い、必要に応じて設備の入れ替えなども検討していくのがおすすめです。以下では、代表的なバリアフリーリフォームの内容と、その費用の目安をご紹介します。

  • 1 手すりの設置
  • 2 段差の解消
  • 3 滑りにくい床にする
  • 4 ドアを引き戸に変更
  • 5 住宅設備の入れ替え

1. 手すりの設置

手すりを握る手

手すりの設置は、バリアフリーリフォームの基本となる工事です。高齢になると階段の上り下りが辛くなり、平坦な場所でも移動が困難になる場合があります。手すりを設置することで、身体を支えながら安全に移動することができ、転倒を防ぐことができます。

設置する場所は、階段や廊下、トイレ、浴室など、特に動作の補助が必要な場所を優先します。その際、使用者の身長や動きに合わせて、適切な高さと位置に設置することが重要です。

費用

手すりの設置費用は、一般的には工事費込みで1本1万5,000円程度からと言われています。ただし、実際の生活では複数箇所への設置が必要になることが多く、その場合は3万円程度からの費用を見込む必要があります。

特に階段の手すりは長さがあるため、10万円以上の費用がかかることもあります。また、壁の下地補強が必要な場合は、追加費用が発生する可能性があります。

2. 段差の解消

平坦な敷居

段差の解消は、つまずきや転倒を防ぐために重要な工事です。特に足腰が弱くなってきた高齢者にとっては、わずかな段差でも大きな障壁となります。玄関、浴室、和室からリビングへの段差など、日常的に通行する場所の段差を解消することで、安全な移動が可能になるでしょう。

解消方法としては、スロープの設置や床のかさ上げ、式台の設置などがあり、場所や段差の高さに応じて適切な方法を選択します。

費用

段差解消の費用は、工事を行う場所の面積と使用する床材によって大きく変わります。浴室の段差解消であれば約5万円から施工可能ですが、リビングや和室など広い面積での段差解消は、床材の張り替えも含めて相応の費用が必要になります。また、スロープを設置する場合は、勾配や長さによって費用が変動します。

3. 滑りにくい床にする

滑りにくい浴室の床

高齢者にとって、滑りやすい床は重大な事故の原因となります。特に水回りでの転倒事故は多く、浴室や洗面所、トイレなどは優先的に対策が必要です。滑りにくい床材に変更することで、転倒による怪我や骨折のリスクを大幅に減らすことができます。

ただし、場所に応じて適した床材を選ぶことが重要で、たとえば浴室ではノンスリップ加工された床材、居室では転倒時の衝撃を和らげるクッション性のある床材を選ぶなど、使用環境に合わせた選択が必要です。

費用

浴室などを滑りにくい床材に変更する場合、面積にもよりますが、4〜20万円程度の費用がかかります。床材の種類や工事の範囲によって費用は変動しますが、水回りの床は安全性を重視して選ぶことが重要です。また、掃除のしやすさなども考慮したうえで、床材を選択することをおすすめします。

4. ドアを引き戸に変更

床にレールがない引き戸

開き戸から引き戸への変更は、移動をスムーズにする工事です。開き戸は開閉の際に身体の移動が必要で、特に歩行器や車椅子を使用する場合は操作が困難です。引き戸であれば、身体の移動が少なくて済み、力も少なくて済むため、高齢者でも楽に開閉できます。また、緊急時の救助もしやすくなるメリットもあります。

費用

ドアを引き戸に変更する費用は、場所や工事の内容によって異なりますが、トイレや浴室のドアを引き戸に変更する場合は5万円程度から可能です。ただし、壁の構造によっては下地工事が必要になったり、引き戸を収納するスペースの確保が必要になったりする場合もあり、その際は追加の費用が発生します。

5. 住宅設備の入れ替え

手すりや呼び出しブザーが設置されたトイレ

トイレや浴室などの水回り設備を、バリアフリー対応の新しい設備に入れ替えることで、より安全で使いやすい空間を実現できます。たとえば、浴室では出入りがしやすい浴槽への交換や、暖房換気乾燥機の設置による温度差対策、トイレでは適切な高さの便器への交換などが挙げられます。これらの設備は、高齢者の自立した生活をサポートするとともに、介護者の負担軽減にもつながります。

費用

住宅設備の入れ替えは、工事の規模によって費用が大きく異なります。特に浴室の改修は大規模な工事となることが多く、洗い場と浴槽の底の段差を少なくするためのバスタブ入れ替えなどは、100万円以上の費用を見込む必要があります。トイレの洋式化や便器の交換は30〜50万円程度、システムキッチンの交換は100〜150万円程度が目安です。工事内容や設備の仕様によって費用は変動するため、予算と相談しながら必要な改修を検討することが重要です。

バリアフリーリフォームを成功させるポイント

バリアフリーリフォームを成功させるポイント

バリアフリーリフォームは、住まいの安全性と快適性を高める工事ですが、ただ闇雲に進めるのではなく、計画的に実施することが大切です。工事費用や施工内容、家族全員の生活への影響など、さまざまな要素を考慮する必要があります。以下では、バリアフリーリフォームを成功に導くための4つのポイントを解説します。

  • ❖ 本当に必要なリフォームを行う
  • ❖ 予算と優先順位を考えて実施する
  • ❖ 家族みんなが暮らしやすい家にする
  • ❖ 実績が豊富な業者に依頼する

本当に必要なリフォームを行う

バリアフリーリフォームは、現在必要なものと将来必要になるものに大別されます。しかし、将来必要になるだろうと予測して行うリフォームは、実際にその状況になってみないと適切な寸法やサイズがわからないケースが多々あります。たとえば、車椅子の使用を想定してスロープを設置しても、実際に必要になったときには幅が足りないということも起こり得ます。

そのため、バリアフリーリフォームは現時点で本当に必要な箇所に対して行い、将来的な改修は状況に応じて検討していくことが賢明です。

予算と優先順位を考えて実施する

バリアフリーリフォームは、工事の内容によって大きな費用がかかることがあります。たとえば浴室の改修やキッチンの入れ替えなどは、100万円以上の費用が必要になることも珍しくありません。

そのため、限られた予算で効果的なリフォームを実現するには、使用頻度の高い場所から優先的に改修を進めることが重要です。特に階段やトイレ、浴室など、事故のリスクが高く、日常的に使用する場所を優先して改修することで、より安全で快適な住環境を段階的に整えることができます。

家族みんなが暮らしやすい家にする

バリアフリーリフォームというと、高齢者や障害者のための改修と考えがちですが、実際には一緒に暮らす家族全員の生活に影響を与える工事です。たとえば、介護のしやすさを重視するあまり、他の家族の動線を妨げてしまっては本末転倒です。

手すりの位置や段差解消の方法、設備の配置などは、高齢者や障害者の利用のしやすさだけでなく、同居する家族全員の使い勝手を考慮して決定することが大切です。これにより、家族全員が快適に過ごせる住まいを実現できます。

実績が豊富な業者に依頼する

バリアフリーリフォームは、一般的なリフォームとは異なる専門的な知識と技術が必要です。単に見た目や機能性だけでなく、安全性や介助のしやすさまで考慮した設計と施工が求められます。

そのため、バリアフリーリフォームの実績が豊富な業者に依頼することが重要です。経験豊富な業者であれば、住まい手の状況や要望を適切に理解し、安全性と使いやすさを両立した提案ができます。また、介護保険で用意されている住宅改修制度の利用など、各種支援制度に関する知識も豊富ですので、より経済的な工事の実現にもつながります。

バリアフリーリフォームの事例2選

実際のバリアフリーリフォームがどのように行われているのか、具体的な事例をご紹介します。これらの事例では、家族構成や生活スタイルに合わせて、安全性と快適性を両立した住まいづくりが実現されています。

1. 段差をなくして両親と気持ちよく住める家に

段差をなくして両親と気持ちよく住める家に

建築年 1973年(築50年)
家族構成 本人+配偶者+両親
概算施工費 1,500万円
構造 木造

比較的新しい屋根を除いて建物全体をスケルトン状態まで解体し、全面的なリノベーションを実施した事例です。既存の柱に加えて新たな柱を追加することで建物の強度を高めました。高齢の両親の動線を考慮し、トイレの位置や広さの設計、両親の部屋には2WAYのドアを採用するなど、細やかな工夫が施されています。

また、以前は暗くて寒かったリビングは、採光計画をしっかりと行うことで、明るく快適な空間へと生まれ変わりました。段差をなくしたバリアフリー設計により、両親も安心して生活できる住まいが実現しています。

このリフォーム事例を詳しく見る

2. バリアフリーに高断熱、理想をかなえた高機能住宅

バリアフリーに高断熱、理想をかなえた高機能住宅

建築年 1978年(築45年)
家族構成 ご夫婦+子
概算施工費 -
構造 木造

築45年の住宅を、バリアフリーと高断熱性能を兼ね備えた快適な住まいへとリノベーションした事例です。特に断熱性能の向上により、冬でも暖房をつけなくても暖かく過ごせる環境を実現しています。また、日当たりの良さを活かした設計により、昼間は電気をつけなくても十分な明るさが確保されています。

水回りは、継ぎ目のない設計を採用することで清掃性を高め、家事の負担を軽減。さらに、庭にはウッドデッキを設置し、家族が自然とくつろげる空間づくりにも成功しています。高齢者への配慮と家族全員の快適性を両立させた、理想的なバリアフリーリフォームの好例といえます。

このリフォーム事例を詳しく見る

バリアフリーリフォームをお考えならまずご相談を

バリアフリーリフォームをお考えならまずご相談を

バリアフリーリフォームは、通常のリフォームとは異なり、高齢者の身体機能や生活動線、介護のしやすさなど、より専門的な知識と経験が必要とされます。そのため、バリアフリー改修の実績が豊富な業者に相談し、適切なアドバイスを受けることが重要です。

LIXIL不動産ショップではこれまで多くのリフォームに携わり理想の住まいの実現をお手伝いしてきました。
LIXILの最新設備を使ったリフォームや資金のご相談も可能ですので、まずはお近くのLIXIL不動産ショップへご相談ください。

近くのLIXIL不動産ショップを探す

まとめ

バリアフリーリフォームは、高齢の両親との安全で快適な暮らしを実現するための投資です。転倒や転落などの事故を防ぎ、自立した生活をサポートするとともに、介護する家族の負担も軽減できます。

効果的なバリアフリーリフォームを実現するためには、現在の必要性を見極めながら、予算と優先順位を考慮して計画的に進めることが大切です。また、高齢者だけでなく、同居する家族全員にとって使いやすい住まいとなるよう配慮することも重要です。

バリアフリーリフォームには手すりの設置や段差の解消といった基本的な改修から、設備の入れ替えまで、さまざまな工事内容がありますが、まずは事故のリスクが高い場所から優先的に改修を進めることをおすすめします。その際は、バリアフリーリフォームの実績が豊富な業者に相談し、専門的なアドバイスを受けながら進めることで、より安全で快適な住まいづくりを実現できるでしょう。

この記事の監修者

新井智美 / トータルマネーコンサルタント

1級ファイナンシャル・プランニング技能士、CFP®、DC(確定拠出年金)プランナー、住宅ローンアドバイザー、証券外務員の資格を保有。マネーコンサルタントとしての個人向け相談、NISA・iDeCoをはじめとした運用にまつわるセミナー講師のほか、金融メディアへの執筆および監修に携わっている。現在年間500本以上の執筆・監修をこなしており、これまでの執筆・監修実績は3,000本を超える。